ペアントリのグルメ日記
「野に咲く九月のスミレのように」
「私を食べてほしいの」
ある日のこと。ペアントリにそう頼んできたのは、美しい女優さんでした。
「私は今が一番美しいわ。だから、この美しさを、永遠に……
ううん。正直に言うわ。醜く老いたくない。飽きられて忘れられたくない。そうなる前に、永遠になりたいの。
だからペアントリ。私を食べて。永遠にして」
「いいですよ。いただきます」
断る理由もなかったので、ペアントリは女優さんを食べました。
取り立てて罪深い魂でもなかったので、彼女は苦しむことなく、ペアントリの胃袋に溶けていきました。
それからしばらくして。案内人さんと雑談していると、「そういえば」と尋ねられました。
「この間訪ねてきた女優さんは、どんなお味でした?」
ペアントリは正直に答えました。
「忘れちゃった」
「忘れたんですか?」
「うん。取り立てて綺麗な魂でもなかったし、罪深いコクもなかったし、なんていうか、どこにでもいる、独り善がりな人だったよ」
そう言ってお茶を啜ると、ペアントリは「このお茶美味しいね」と案内人さんを褒めるのでした。