100%昔?話「若返った老夫婦」
昔々、かどうかはよくわかりませんが、とりあえず人があまり長生きできなくて、遺伝子鑑定なんてものもなかった頃。
子どものいない老夫婦が、行き倒れていた旅人を拾ってあげました。
旅人は玉のような肌で、水浴びさせてやるとツヤツヤと微笑み、ごはんをあげるとポロポロと泣いて喜び、親切にしてやると図々しく居着きました。
そこは子どもがいない老夫婦でしたから、寂しさが紛れるのは大歓迎でした。
……本当に?
ええ、不満はありました。老いた夫婦二人で終わりを待つだけだったのに、欲が出てきたのです。
ある日、とうとう耐えかねて、老夫婦は旅人にお願いしました。
「なぁアンタ。私らが死ぬまででいいから、私たちの子どもにならないか?」
旅人は快諾しました。子どものことは知っています。つがいの間に生まれる命のことです。
親切にされたお返しに、旅人は人でも獣でもなく、神とも妖怪とも言い難い何かの本性を現して、夫婦を玉のような真っ白な肌で包み込みました。
いきなりふわふわした皮だか汁だか触手だかわからないものに包まれて、おじいさんはびっくり仰天。
「出してくれぇ!」と叫びますが、開いた口にも何かが押し寄せ、舌を吸われ、口を吸われ、髪を肌を指先を腹を尻をあらぬところをチュウチュウ吸われ、あっという間に天女と踊るような夢見心地に連れて行かれました。
おばあさんの方も「堪忍しとくれぇ!」と叫びましたが、あっという間に「「良いではないか良いではないか」」の大合唱。舌を吸われ頬を吸われ乳房を吸われの以下省略で、まるで天女になった気持ちで何かの腹の中で蕩けていきました。
そうして夜が明ける前に、何かは家を出て行ったのですが……それ以上を語るのは野暮ですね、ええ。
* * *
昔々、あるところに子どものいない老夫婦がいました。
二人はある日行き倒れた旅人を拾ったのですが、その旅人はなんと神様で、一宿一飯のお礼に老夫婦を若返らせてやって、二人にはやがて子どもができたそうです。
若返ったのは見た目と気分だけだったので、老夫婦はすぐに亡くなりましたが、生まれてきた子はそれまで両親によく尽くして……
え? ええ。生まれてすぐに、あっという間に大きくなったそうですよ。神様から授かった子だからそういうこともあるだろうと……
ええ。行き倒れていた旅人によく似ていたそうです。
その子のその後ですか? ええ、両親を弔った後、旅に出たそうで。
今ごろどこで何をしてるのやら……
そうそう、山向こうに、みんな同じ顔の、男も女も翁も嫗も、み〜んな玉のような肌の村があるそうですが……
いえいえ、それはまた別の話ですから。
聞きたいのなら、お茶をもう一献、お菓子も添えてくださいな。