涙をななつ数えたら
どいつもこいつも死んでしまえばいいと、そう呟くには彼は寂しがりすぎた。
物心ついたときから向けられるのは冷たい目、目、目。大人からも子どもからも蔑まれ、彼は今日も一人ぶらんこに腰かける。
どうしてだろう。どうして誰もオレを見てくれないんだろう。問いかけは結局いつもの答えに落ち着いた。自分の出来が悪いからだ。人一倍早く入学したのにあっという間に同い年の後輩たちに追い抜かれた落ちこぼれ。
だけどその答えにも納得いかない。自分は確かに落ちこぼれだ。だけど入学する前から、大人たちは冷たい目でオレを見ていた。
俯いた耳が遠くの歓声を拾う。もう夕暮れだ。遊び疲れた子どもたちが母親に甘えている。
どうしてオレには親がいないんだろう。火影のじっちゃんは何も教えてくれない。大人たちの中で唯一冷たい視線を向けず何かと気にかけてくれる翁のことは秘かに尊敬しているが、時折憎らしくなるのも確かだ。
なぜ自分を人より早くアカデミーに入れたのか。自分が落ちこぼれることがわかっていたのか。
いっそ里から追い出してくれればいいのに。そう思ったことも何度もある。それを決してしないことに、限りない感謝もしているのだけれど。
アカデミーに入ったことを後悔はしていない。夢ができた。友達もできた。
けれどどんなに努力しても術は上達せず、教師たちの目は相変わらず冷たい。友人たちの自分を見る目もどこか冷たく、見下され対等に見てもらえてないのに彼は気づいていた。
イタズラでもしに行こうか。いつの頃からか憂さ晴らしと人目を引くためにしてきたそれは大人たちの目を更に冷たくさせるだけだったが、他に人に見てもらえる手段を彼は知らない。冷たい視線でこそこそと陰口を叩かれるより、面と向かって怒ってもらえた方がマシだった。
立ち上がり、さて今日はどんなことをしてやろうかと考えると、子どもを家に入れた母親が冷たくこちらを睨んでいるのに気づいた。
顔をしかめ舌を突き出して背を向ける。走り去りながらお決まりの捨て台詞を吐いた。いつか火影になって見返してやる。
走り出した先には彼の秘密の練習場が待っている。もう随分と暗いが構うものか。いつか立派な忍者になって、火影になって、そしたらきっと、みんながオレを見てくれる。歯を食いしばった頬に涙はなかった。
物心ついて一番最初に学んだのは涙の涸らし方だったように思う。