崩れ墜ちた空の真中まなか

 流された血潮の数々を、今やっと悼むことができる。  灰色の傷痕で埋め尽くされた、もう塞がらない日々。  取り返すことのできない過去を想い、今やっと涙を零せる。  瓦礫に葬られた友とかたきを、今等しく悼むことができる。  墓標の代わりに突き刺さった、天井の白い牙。  空を見れない墓穴はかあなに、今やっと花を降らせる。  一人歩いて見上げるのは、かしいで折れた鉄の塔。  ずっと見上げて睨んだ空への梯子が、今は無惨に朽ちている。  それを不思議に感じながら、心の虚空に耳を澄ませる。  焦げた風が何度も吹いて、鉄の骨が悲鳴を上げる。  もう泣くことはないのにと、思いながら泣いている。  もう泣かなくても良いけれど、まだ泣いていても良いのだと泣いている。  壊れ果てた街の廃墟が、すべて絶えた人の墓場に見える。  変わらず昇る日輪が、沈む海に歌っているような気さえする。  変わらず照らす綺羅星が、静かに鈴を鳴らしている気さえする。  細波が歌を奏でる白浜で、誰もいない島を目指して旅に出る。  誰もいない小さな島で、戦うことなく残った緑に出会う夢を見る。  乾いた風が吹く中で、いつか、誰かに出会う夢を見る。  消えていった言葉の数々を、今やっと悼むことができる。  空色の幻想に溶けていった、もう戻らない日々。  夢を見れなかった過去を想い、今やっと涙を零せる。